食・製菓・調理・栄養のお仕事

栄養士と調理師の違いとは?資格取得方法とダブルライセンスについても解説

栄養士と調理師の違いとは?

私たちの生活に欠かせない「食」。その分野で活躍する専門家として、栄養士と調理師という2つの職業があります。どちらも食に関わる大切な仕事ですが、その役割や必要とされる知識、技術には違いがあります。

「将来は食に関する仕事に就きたい」と考えている高校生の皆さんの中には、「栄養士と調理師、どちらが自分に向いているのだろう?」「両方の資格を取った方がいいのかな?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、栄養士と調理師それぞれの役割や仕事内容、資格取得方法について詳しく解説します。さらに、両方の資格(ダブルライセンス)を取得するメリットについても、実際の現場での活用例を交えながら紹介していきます。


栄養士と調理師の違いとは

まずは、栄養士と調理師の基本的な違いについて、それぞれの専門性や役割を紹介します。

栄養士と調理師の違いとは

栄養士の役割:食と健康の専門家

栄養士は、「食」を通じて人々の健康をサポートする専門家です。

病院や福祉施設、学校などで働き、栄養バランスの取れた献立の作成・調理・提供を行います。

このほか、学校や保育園で「食」の大切さを伝える食育活動も大切な業務の一つであり、健康な人々に向けて栄養指導を行います。

栄養士には「管理栄養士」という上位資格があります。国家試験に合格を合格することで、より専門的な栄養指導や栄養管理を行うことが可能です。

より詳しく「管理栄養士」の仕事内容を知りたい方はこちら
管理栄養士の仕事内容についてわかる!

調理師の役割:料理のプロフェッショナル

一方、調理師は料理のプロフェッショナルとして、ホテルやレストラン、給食施設などで活躍します。衛生管理や調理方法の工夫によって、美味しく安全な料理を提供することが主な業務です。

料理人としての調理に必ずしも調理師免許は必要ありませんが、取得することで専門的な技術・知識を証明できるためキャリアアップにも繋がります。

より詳しく 調理師仕事内容について知りたい方はこちら
調理師の仕事内容についてわかる!

栄養士と調理師の共通点と違い

共通点
栄養士も調理師も「食」を通じて人々の健康や生活を支える重要な仕事です。どちらも給食施設や病院、飲食業界などで活躍し、食事を提供することが主な役割になります。

違い
栄養士と調理師の大きな違いは、その専門性にあります。

栄養士
栄養分野の専門知識を活かし、「栄養管理」を行います。栄養バランスのとれた献立計画が主な業務であり、予算や材料が限られている中でも健康を促進できる食事を考える能力が求められます。

調理師
調理技術・知識を駆使して、「調理」を行います。美味しく安全な料理を提供することが主な業務です。安全な食事を提供する為に、専門的な衛生管理能力・知識が求められます。


栄養士・調理師の資格取得方法

栄養士・調理師で活躍するには国家資格の取得が必要です。それぞれどのようにして資格が取得できるのか、詳しく解説します。

栄養士の資格取得方法(国家資格)

栄養士の資格を取得するには、栄養士養成施設を卒業する必要があります。この資格は、卒業と同時に取得できるため、試験を受ける必要はありません。現状、栄養士の資格を取得するには、栄養士養成施設の卒業以外に手段はありません。

養成施設には以下のような種類があり、それぞれ強みなどが異なります。

1. 専門学校(2年制)

  • 実践的な技術習得に重点
  • 即戦力の育成を目指す
  • 資格取得に特化したカリキュラム

2. 短期大学(2年制)

  • 教養科目も含めた幅広い学び
  • 研究的な要素も含む
  • 四年制大学への編入の取り組み

3. 大学(4年制)

  • より専門的な知識の習得
  • 研究活動の機会
  • 管理栄養士を目指す場合の基礎作り

厚生労働省の発表では、2022年の栄養士免許交付数は16,654人でした。これは調理師に比べると少ない数字となっています。また、管理栄養士の合格者数は2023年で8,831人と、栄養士と比べて半分程度の数となっています。さらに専門性の高い資格となっています。

また、女性の資格取得割合が非常に多いことが特徴的です。2023年の政府調査では、男性の栄養士が1578人であるのに対して、女性の栄養士は19918人と約93%以上が女性を占めています。

参照:賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種

より詳しく 栄養士資格取得について知りたい方はこちら
栄養士になるには

調理師免許の取得方法(国家資格)

調理師免許を取得する方法には、以下の2つがあります。

1.調理師試験に合格する

調理師試験の受験には、飲食店での現場経験が2年以上であることが受験資格とされています。現場経験はキッチンでの調理経験であることが必須です。この他、受験資格には細かな取り組みがあり、職場の責任者の協力が求められます。
しかし、調理師試験は専門学校に通うことなく、独自のペースで勉強し取得できるのが最大のメリットです。

厚生労働省の統計によると、2023年の調理師試験合格率は60.8%となっており、受験対策をしっかり行えば合格できる難易度と言えるでしょう。

参照:厚生労働省 令和5年度 調理師試験実施状況 

2.調理師養成施設を卒業する(卒業と同時に資格取得可能)

厚生労働省認定の「調理師養成施設」を卒業すれば、試験なしで調理師免許を取得できます。調理師試験の受験資格に求められる「2年以上の現場経験」も不要なため、調理師養成施設卒業後、新卒として就職するキャリアプランの形成も視野に入れられます。

厚生労働省の発表によると、調理師免許取得者の約47%が養成施設卒業で取得しています。試験による取得に比べれば数は少ないですが、夜間学校や和洋中など特化した分野を学習できる選択肢の多さもあって、決して少なくはない割合が養成施設卒業で取得していると言えるでしょう。

参照:厚生労働省 調理師免許交付数の推移

より詳しく 調理師免許取得について知りたい方はこちら
調理師になるには?必要なこととは?

栄養士と調理師、それぞれの就職先

栄養士と調理師では、活躍できる職場や求められるスキルが異なります。

調理師の就職先

飲食店やホテルのレストランは、多くの調理師が活躍する代表的な職場です。特に高級レストランや料亭では、より専門的な調理技術が求められます。例えば、日本料理の料亭では、繊細な包丁さばきや盛り付けの美しさなど、長い年月をかけて磨かれる技術が必要とされます。

飲食店以外では学校、病院や介護施設、食品メーカーなどが就職先として挙げられます。学校や介護施設では、ホテルと同様に大量の調理業務があります。それに加えて、栄養バランスを考慮した調理が特徴的です。特に成長期の子どもたちや健康管理が必要な高齢者にとって、おいしさと栄養を両立させた食事は極めて重要です。

このように、調理師は多様な職場へ就職できるチャンスがあります。料理の腕を磨きながら、自分の興味や得意分野を活かせるのが調理師という職業の大きな魅力といえるでしょう。

栄養士の就職先

栄養士の仕事は、栄養に基づく健康づくりを起点として、「食」に関係する多様な職業選択があります。

病院や介護施設では、患者さんや利用者の状態に合わせた栄養管理が必要とされるため、栄養士の専門知識が大いに活かされます。また保健所では、地域住民の健康増進のための栄養指導や食育活動を行うこともあります。

近年では健康意識の高まりから、食品メーカーの研究職としても活躍の機会があります。新しい健康食品の開発や既存製品の栄養価向上など、より専門的な栄養の知識を活かした仕事も就職先の一つに挙げられます。ここでは、製品の栄養成分表示の作成や健康効果の検証など、科学的な視点と栄養学の専門知識を組み合わせた仕事が求められます。

栄養士と調理師が共に活躍する職場

学校や保育所の給食センター、病院や介護施設の厨房では、栄養士と調理師が協力して仕事をすることが多くあります。例えば、栄養士が献立を立て、必要な栄養素が含まれているかを計算し、それに基づいて調理師が実際の調理を担当するという連携が一般的です。

特に病院では、患者さんの病状に合わせた特別な食事(治療食)が必要なケースもあり、栄養士の専門知識と調理師の技術が組み合わさることで、おいしく栄養バランスの取れた食事を提供することができます。

社員食堂や福利厚生施設でも、健康管理と美味しさの両立のために栄養士と調理師が一緒に働くことがあります。働く人々の健康維持や生産性向上のためには、栄養面だけでなく味の満足度も重要だからです。

このように、栄養士と調理師はそれぞれの専門性を活かした就職先がある一方で、両者が協力することでより良い「食」を提供できる現場も多くあります。食に関わる仕事を目指す際には、自分の興味や得意分野に合わせて進路を選ぶとよいでしょう。


栄養士と調理師 ダブルライセンスの取得方法

栄養士と調理師の両方の資格を持つことで、より幅広い知識と技術を身につけることができます。ダブルライセンス取得の方法について、詳しく見ていきましょう。

専門学校での同時取得

最も効率的な方法は、栄養士と調理師の両方の資格取得を目指せる専門学校のコースを選ぶことです。通常、それぞれの資格を別々に取得しようとすると多くの時間と費用がかかりますが、ダブルライセンス取得を前提としたカリキュラムでは、両資格に共通する授業(食品学や衛生学など)を効率よく学べるため、学習期間の短縮や学費の節約が可能になります。

既存の資格に追加で取得する場合

栄養士の資格取得方法、調理師免許の取得方法の項で説明したとおり、それぞれの資格取得には養成施設を卒業することで資格を取得できます。調理師の場合は、飲食店での現場経験が2年以上あれば、調理師試験で免許を取得することも可能です。

ここで注意したいのが、どちらかの資格を取得していたとしても、受講学科や試験項目が免除されないという点です。追加で資格を取得したい場合は、学びの時間をしっかり確保することが資格取得への第一歩となるでしょう。


ダブルライセンス(栄養士+調理師)を取得するメリットとは

仕事の幅が広がる

ダブルライセンスを持つことで、就職先の選択肢が大幅に増えます。

例えば食品メーカーの商品開発部門では、調理技術を活かした試作と栄養士としての専門知識を組み合わせて、健康志向の新商品開発に貢献できます。

栄養士と調理師の両方の視点を持つことで、献立作成から実際の調理まで一貫して担当できるため、理想とする調理提供をより確実に実現できるようになります。

二つの資格を持つことで、一般的な栄養士や調理師では担当しにくい専門的なポジションでの活躍も期待できます。転職・就職活動でのアピール材料として強力な武器となるので、キャリアアップの機会も増えていく可能性が高まります。

栄養士と調理師をまとめて取得すると授業料が安くなる

栄養士と調理師を一度に取得したい場合、専門のコースや制度を活用することで授業料を安く抑えることができます。

三幸学園では、栄養士と調理師の両方の資格取得を補助するステージアップ制度があります。2校目以降の入学金が免除され、授業料も半額になります。大学進学をするより費用が抑えられるため、就職したい職業に活かせる資格を複数取得するのに便利です。興味のある方は、ぜひW国家資格コースの詳細をチェックしてみてください。

三幸学園 辻学園調理・製菓専門学校
W国家資格コース(ステージアップ制度)


まとめ

この記事では、それぞれの役割や仕事内容、資格取得方法、そしてダブルライセンスのメリットについて解説してきました。

「食に関する仕事に就きたいけど、どちらの資格を取るべきか迷う…」という場合は、情報の収集から始めてみることをおすすめします。各資格を応募条件にしている職業はなにか、食に関係する業界はどんなものがあるかなど、切り口を増やすことで進路の糸口を掴むことができるでしょう。

また、進路を決める前に、オープンキャンパスや体験入学に参加して、実際の学校の雰囲気や学びの内容を体験してみることも大切です。先輩の話を聞いたり、実際に授業を体験したりすることで、自分に合った進路が見えてくるかもしれません。

食に関わる仕事は、人々の「生きる」を直接支える、やりがいのある仕事です。皆さんが自分に合った道を見つけ、食のプロフェッショナルとして活躍されることを願っています。

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