歯科医師の仕事内容についてわかる!必要な資格や給料は?
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歯科医師の仕事内容についてわかる!必要な資格や給料は?

歯科医師は、健康に生活していく上で欠かせない存在です。

本記事では歯科医師の仕事内容や国家試験、歯科医師の適性などについて解説しています。歯科医師の将来性なども知ることができ、歯科医師を目指すための参考になります。将来は歯科医師になりたいと考えている人は、ぜひ最後までお読みください。

歯科医師とは

歯科医師の仕事は、虫歯や歯ぐきの病気を治療することと想像した人も多いでしょう。

しかしそれだけではなく、口腔周辺の病気や怪我などの外科治療、歯の機能回復や歯並びの矯正も行います。この他にも、定期的な歯のクリーニングや歯磨き指導など、口腔内の健康を保つことも歯科医師の大切な仕事です。

歯科医師とその他の職業の違い

医師、歯科医師、歯科衛生士の名称はそれぞれ似ていますが、仕事内容や資格などに大きな違いがあることをご存じでしょうか。

ここからは3つの職種の違いについて、確認していきましょう。

医師との違い

歯科医師と医師では、通う大学や学部、取得すべき免許の種類が異なります。

まず歯科医師には歯科医師免許、医師には医師免許が不可欠です。そして歯科医師免許を取得するためには歯科大学や歯学部、医師免許の取得には医科大学や医学部の、卒業資格が必要です。

また歯科医師と医師には、診療範囲にも違いがあります。歯科医師の診療範囲は口腔内と口腔周辺のみであるのに対し、医師の診療範囲は歯科治療を除いた全身が対象です。

歯科衛生士との違い

歯科医師が歯科治療を行うのに対し、歯科衛生士は歯石除去やフッ素塗布など、歯科診療の補助や歯科予防処置を行います。また、ブラッシング指導などの歯科保健指導も、歯科衛生士の仕事です。

歯科医師資格は6年制の歯科大学や歯学部の卒業後、国家試験の受験資格を得られます。一方の歯科衛生士は、専門学校や短大などの歯科衛生士養成機関を卒業すれば、国家試験の受験が可能です。

歯科医師の仕事内容

歯科医師の仕事は、一般的に考えられている虫歯治療の他にも様々なものがあります。

ここからは、具体的な業務内容を紹介していきます。

虫歯・歯周病などの治療

歯科医師の役割は、虫歯や歯周病の治療です。治療にあたり、X線写真やCT写真を撮影し、虫歯や歯周病の状態を把握します。

歯の状態を把握した後は、高速で回転するエアタービンで虫歯部分を削ったり、場合によっては歯を抜いたりします。そして歯周病治療では、歯周病の原因となる歯垢や歯石の除去が主な内容です。

虫歯予防の処置

虫歯予防の指導にあたることも、歯科医師にとって大切な仕事です。時には定期健診や正しい歯磨きや口腔ケアなど、患者への教育にも力を入れています。

定期的に指導を行うことで、虫歯の早期発見や早期治療が可能となり、患者の口腔内の健康維持に貢献しています。

歯の機能回復

虫歯や外傷によって歯の一部分を失ったり、歯が欠損したりした場合は、歯の機能回復が必要になります。この歯の機能回復も、歯科医師には重要な仕事の一つです。

もし歯の一部が欠けた際は、レジンの充填や型取りした金属を詰めます。また、歯を大きく欠損した場合は、入れ歯やインプラントなどで歯を補います。

矯正治療

歯並びの矯正治療も、歯科医師の業務領域です。歯並びが悪いと、見た目の印象だけでなく、かみ合わせや発音にも影響が出るため、矯正治療を行う歯科医師は需要があります。

矯正治療は、歯にワイヤーなどを装着し、年単位の時間をかけて歯並びを矯正することが一般的です。

口内の治療

歯科医師が治療するのは、歯や歯ぐきの疾患だけでなく、口腔内や口腔周辺に現れる様々な疾患や外傷の外科治療も含まれます。

口腔外科治療の対象となる箇所は、顎変形症や顔面外傷、唾液腺の疾患、口腔癌など、多岐にわたります。

歯科医師になるには歯科医師国家試験が必要

歯科医師になるためには、歯科医師国家試験を受けなければなりません。

ここからは歯科医師国家試験の概要や合格基準、難易度などを紹介します。

歯科医師国家試験とは

歯科医師国家試験とは、歯科医師免許を取得するための国家試験です。

歯科医師国家試験は、例年2月上旬に実施されています。以下の試験内容は、2025年の試験概要となります。

試験は全360問マークシート方式で、問題の内訳は必修問題、一般問題、臨床実地問題の3種類で、実技試験はありません。

歯科医師国家試験は毎回合格基準が異なる点も特徴で、総論(領域A)と各論(領域B)それぞれの平均点と標準偏差を使った、相対基準で評価されます。

歯科医師国家試験を受験するためには、6年制の歯科大学や歯学部で必要な課程を修めて卒業する必要があります。国家試験の時点で、卒業見込みが出ている人も受験可能です。

また、国外で歯科大学や歯学部を卒業、もしくは歯科医師免許を取得した人の場合、歯科医師国家試験受験資格認定で認められることで、受験資格を得られます。

歯科医師国家試験の難易度・合格率

2024年に行われた歯科医師国家試験の合格率は約66%です。約90%以上の合格率であった2024年度実施の医師国家試験に比べてみても、歯科医師国家試験の難易度は高い傾向にあります。

また、同歯科医師国家試験における新卒者の合格率は約81%、既卒者の合格率は約39%と大きな差があることがわかるでしょう。

歯科医師国家試験に受かるための大学選び

歯科医師になるためには、6年制の歯科大学もしくは歯学部に入学する必要があります。

厚生労働省が発表した、2024年の歯科医師国家試験の学校別合格者状況によると、私立大学よりも国公立大学を卒業した受験者の方が、若干合格率が高くなっています。

このことから国公立大学に進学する方が、歯科医師国家試験に合格しやすいといえるでしょう。

歯科医師の勤務先

歯科医師の勤務先の多くは、歯科医院や大学附属病院ですが、他にも歯科医師が活躍している職場があります。

ここからは、歯科医院や大学附属病院をはじめとする、歯科医師の勤務先について見ていきましょう。

歯科医院

歯科医院は、歯科医師が働く代表的な就職先です。

歯科医院で働く歯科医師の半数以上は、自分で歯科医院を経営しています。最初は正社員として経験を積んでから、独立開業する歯科医師が多いとされています。

大学附属病院

病院勤めの歯科医師の中には、大学附属病院で働く歯科医師が多くいます。これは、大学卒業後に1年間義務付けられている臨床研修が、大きく関係しているといえます。出身大学に附属病院がある場合、そこで卒業後の臨床研修を行い、そのまま就職する人も多いためです。

また、大学院で研究を継続したいために、大学附属病院で働いている人もいます。学会の専門医や認定医を目指すのであれば、大学附属病院の方が向いているでしょう。

訪問歯科診療

歯科医院への通院が難しい高齢者のために、歯科医師が患者を訪問して診療することを訪問歯科診療といいます。

訪問先は患者の自宅や介護施設で、病院や歯科医院の歯科医師が診療することが一般的です。最近では、訪問歯科診療を専門とする歯科医院もあり、寝たきりとなった患者の口腔ケアや入れ歯作りなどを計画的に継続して行います。

介護施設

老人ホームなどの介護施設に勤める歯科医師も中にはおり、入れ歯の調整や虫歯治療の他に、歯磨きなどの口腔ケアも行います。

口から食事を摂れない人は、唾液の分泌が減少し、口腔内が汚れやすく、口腔内細菌による誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。

そのため、高齢者の命を守るための重要な職種として、介護施設に就職する歯科医師は次第に増えていくでしょう。

保健所・公務員

地方自治体の管轄下にある保健所や、自衛隊などの公務員として働く歯科医師も中にはいます。

勤務先が保健所などの行政機関であれば技官として、公衆衛生の向上や行政のサポート、教育分野など、多方面での活躍が期待できます。また自衛隊などに国家公務員(医官)として所属すれば、診療だけでなく研究を行うことも可能です。

歯科治療用器具を開発する企業・メーカー

歯科治療用器具や口腔ケア製品、医薬品などを開発する企業やメーカーで働く歯科医師が、他の就職先に比べれば少数ながらもいます。

一般歯科医院にて就職後、経験を積んでから転職し、歯科の専門知識を活かすことも可能でしょう。

歯科医師の1日のスケジュール

以下は、歯科医院に勤める一般的な歯科医師の1日のスケジュールです。あくまでも一例ですが、気になる人は参考にしてみてください。

・8:30~9:00 カルテ確認、情報共有
・9:00~13:00 午前の診察開始(診察は30分/一人)
・13:00~15:00 昼休み、午後診療の準備
・15:00~19:00 午後診療の開始
・19:00~19:30 診療内容を職員に共有

歯科医師の給料

厚生労働省が令和5年に発表した調査内容によると、歯科医師の全国平均年収は約920万円です。

また、所定内給与は約10万円~120万円の間に分布しています。これは就業形態や勤務先の違いによるものです。2023年度の全国求人賃金は月額で約60万円でした。

歯科医師の適性

歯科医師の適性には、高い倫理観や集中力、コミュニケーション能力などが挙げられます。

ここからは、歯科医師に求められる適性とその理由について見ていきましょう。

倫理観がある

歯科医師は、患者の命と健康を第一に考える必要があります。

また、患者の個人情報を知る立場であるため、患者に関する不用意な言動によって、患者や患者の周辺の人達に不利益をもたらす恐れがあります。患者に関する言動には、細心の注意を払わないといけません。

自ら品位の向上と保持が可能な人であれば、歯科医師の信頼や尊厳を守ることに繋がります。

細かい作業が好き

歯科治療には、歯の詰め物の制作やかみ合わせの微調整など、非常に細かな作業が多くあることが特徴です。そのため、細かい作業が苦にならない人は、歯科医師に向いている可能性があります。

口内の限られたスペースで器具を使用し、ピンポイントで患部を治療しなければならないため、普段から細かな作業に慣れている場合は、円滑に業務を進められるでしょう。

コミュニケーション力がある

歯科医師には、円滑なコミュニケーション力が求められます。患者の不安を取り除いたり、一緒に治療にあたるスタッフとの連携を取ったりするためです。

歯科治療は、患者が感じている痛みや不快感、求めている治療などを聞き取って進めていく必要があります。併せてどういった治療を行うのか説明し、理解してもらうことも必要です。

そのため、患者やスタッフとの信頼関係を築くためにも、コミュニケーション力が欠かせないでしょう。

集中力が高い

歯科治療は、口の中に器具を入れて行います。硬い歯を削る器具を正確に使用しないと、患者に重大な怪我を追わせる危険性があります。

また、削ってしまった歯は元に戻りません。そのため、高い集中力を保ちながら、作業を進めていく必要があります。これらのことから、集中力の維持が得意であれば、歯科医師に適正といえるでしょう。

努力ができる

医療技術は日々進化していきます。そのため、新たな治療技術を取り入れていくための勉強や情報収集は欠かせないでしょう。

向上心を持って何事にも取り組める人は、歯科医師に向いている可能性があります。

歯科医師の将来性

昨今、口腔内の疾患が全身の健康に及ぼす影響が解明されてきており、歯科医療に対する期待は大きくなっていることから、今後も歯科医師は需要がある職業といえるでしょう。

また近年、子どもの虫歯が減少し、高齢者の歯に対する意識が高まっているため、予防処置に重点が置かれつつあります。加えて、審美歯科の需要も増えてきていることから、歯科医師における仕事の多様化は更に進んでいくでしょう。

まとめ

歯科医師の仕事は、歯や歯周病の治療だけではなく、多岐にわたります。人々の命と健康を守ることで社会貢献ができる歯科医師は、やりがいのある仕事といえます。

歯科医師になるための歯科医師国家試験は、大学によって合格率に違いがあるため、大学選びは慎重に検討しましょう。

そして、歯科医師の就職先は幅広くあるため、自身がどの場所で活躍したいかを考えつつ、歯科医師を目指すためにこれから励んでいってください。