
食・製菓・調理・栄養のお仕事
Astro.nasa
京極紗理奈さん
パティシエ

私がこの世界を目指したきっかけは、アニメ『おジャ魔女どれみ』でした。小さい頃に夢中になって観ていたその物語の中で、魔法のようにケーキを作るシーンに心を奪われたんです。「私もこんなふうに人を笑顔にしたい」と思ったその気持ちが、ずっと心の中に残っていました。
専門学校で学んだ“現場で活きる力”
お菓子作りは、ただ甘いものを作るというだけではなく、誰かの喜びや思い出を形にできる仕事。そう気づいた私は、高校卒業後、迷わずパティシエの道に進むことを決めました。その中で選んだのが、製菓の技術だけでなく、現場での実践や販売の流れなども学べる専門学校。現場で必要な力を総合的に身につけたくて、この学校に決めました。
在学中、特に印象に残っているのは「学内店舗実習」です。実際にお客様に商品を販売する中で、ただ“美味しい”だけでは通用しないこと、お客様がどう感じるかを常に考えることが大切だと学びました。なにより、「このケーキかわいい!」「また来たい」といった生の声を直接聞けることが、モチベーションにもなりました。

一度の内定と、原点への立ち返り
卒業を控えた就職活動の時期、私は一度ある職場に内定をいただきました。けれども、職場見学や面談を通して感じた人間関係の複雑さに、自分が本当にここでやっていけるのか不安を抱くようになりました。
その気持ちと向き合うなかで、「そもそも私がやりたいことは何だったんだろう」と、自分の原点を見直したくなったんです。そこで、最初に志望していた個人経営のケーキ屋さんに思い切って連絡し、クリスマスシーズンのインターンシップをお願いしました。
インターンでは、お客様と直接やりとりをしながらケーキを作り、提供するという経験を通して、「やっぱり私は、お客様と近い距離でケーキを届ける仕事がしたい」と再確認できました。その体験を踏まえて、最終的な就職先を改めて選び直すことができたんです。
自分らしいケーキを形にできる場所へ
その後、最終的に選んだ職場でパティシエとして本格的に経験を積みました。オーダーケーキの制作に関わる機会も多く、限られた時間や予算の中で「どうすればお客様にとって一番喜ばれるものを作れるか」を真剣に考えるようになりました。自分の中で“表現することの楽しさ”や“相手の想像を超えるものを形にする面白さ”を強く意識し始めたのは、この頃だったと思います。
そして立ち上げたのが現在のお店「Astro.nasa」です。お誕生日や記念日、サプライズのオーダーケーキを中心に、お客様のストーリーやテーマを聞きながらデザインを提案しています。

“ケーキ=アート”という新しい挑戦
私の今後の夢は、オーダーメイドケーキを“アート”としてもっと社会に広めていくことです。そして、自分一人だけではなく、同じように感性を持ったパティシエを育てていきたい。具体的には、指名制を取り入れたチーム制での運営を考えています。自分のケーキに自信を持っていい、そんな環境をつくりたいんです。「パティシエ=アーティスト」という新しい枠組みで、自由に、自分らしく働ける道をつくること。それが今の私の挑戦です。
枠にとらわれず、あなたらしい道を
高校生の皆さんへ伝えたいのは、「製菓」という枠にとらわれないで、ということ。お菓子作りを学ぶ中で、デザインやマーケティング、接客や写真撮影まで、いろんなスキルが必要になってきます。そして、その“幅広さ”があるからこそ、自分のやりたいことがきっと見つかると思います。